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自己破産後の職業制限は債務整理を考えるときに注意したいポイントの一つです。自己破産は免責によって借金の義務がなくなる債務者保護の強力な制度で、多重債務に苦しむ人にとって大きなメリットがある制度ですが、同時にデメリットもあります。そのひとつが自己破産後の職業制限・資格制限です。
その資格がないと就けない職業に就いている人にとって、自己破産によって資格を欠くことは収入源を失うことにもつながる重大な問題だといえます。
自己破産後の職業制限とは、文字通り就業できない職業があることを意味します。自己破産すると会社をクビになるといった誤った話が出てくるのは、多くの場合、職業制限を正しく理解していないためです。
注意したいのは、自己破産を規定する破産法に制限される職業が書かれているわけではなく、個別の法律に規定された欠格事由などによる制限であり、各法律の規定をチェックする必要があるということです。
自己破産をすることによって就けない職業の代表例と根拠法令を以下に示します。
上記はあくまでも例であり、これ以外にも制限を受ける資格・職業は多数あります。また、一般にいう職業とは異なるものも含まれている点に注意が必要です。
自己破産後の職業制限は永遠に続くものではなく、一定の期間が終われば制限がなくなります。一定の期間とは、復権を得るまでです。職業制限は破産者に対して行われるものであり、復権を得ると破産者ではなくなるため、職業制限も解除される流れになります。
多くの破産者は、破産手続きの開始決定の後に行われる免責によって復権します。免責を得られるまでの期間はケースバイケースですが、破産管財人が不要となる同時廃止事件の場合、3ヶ月程度での免責も可能です。
自己破産を考えている時期に新たに制限対象の資格職業に就きたいと考えているなら、自己破産して免責を得るまで待つことで回避できます。しかし、それ以外のケースで自己破産後の職業制限を回避する方法はないというのが現実です。また、新しくその職業に就くときだけでなく、すでに就いている職業にも影響してきます。
制限対象の職業に就いていて、どうしても続けたい場合は個人再生など他の方法で債務整理を行う手もありますが、自己破産を検討する段階では、他の債務整理手段では解決できない可能性が高いことも事実です。
会社に勤務している場合などでは、職業制限があるからといって必ずしも退職しなければばらないわけではありません。当該資格が必要な部署から別の部署に異動したり、職種を変更したりすることで退職を回避できます。
とはいえ、一定期間は当該の職業を離れなければならないことに変わりありません。状況によっては事前に職業を変えておくことも考えられます。自己破産後に職を失ってしまう可能性が高い場合、収入が途絶える事態は避けなければならないため、事前によく検討する必要があるといえるでしょう。
前述した職業制限の例を見ると対象となる資格・職業は少なくないものの、必ず該当するといったものでもないことがわかります。多くの人が就いている各種製品の営業や販売、製造、一般事務といった職業にはほとんど無関係です。
つまり、自己破産後もサラリーマンなどのほとんどの職業はそのまま続けることが可能といえます。
また、自己破産をしたことをもって職業制限の対象ではないにもかかわらず解雇したり退職を迫ったりすることは違法となる可能性が高い行為です。本来、自己破産をしたからといって仕事が遅くなったり成果が出なくなったりするものではないため、会社によってはクビになるかもしれないということもありません。
ただし、自己破産に至る借金問題が原因で業務に身が入らず重大な影響があれば、最悪解雇ということも可能性としてはあり得ます。しかし、その場合も自己破産後の職業制限とは関係のないことです。
自己破産後の職業制限に引っかかるかどうかは、事前に調べておく必要があります。自分の職業や資格が自己破産による制限の対象かどうかを調べるならインターネット検索が便利です。
また、制限期間中の仕事をどうするかもしっかりと考えておかなければなりません。自己破産後に仕事を探そうという考えでは、手持ちのお金があっという間に無くなってしまう危険性大です。
自分が職業制限にかかるのか判断しにくいケースや、自己破産について不安なことがあるといったケースでは早めに弁護士や司法書士に相談することも必要でしょう。